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グリア細胞のひとつであるミクログリアは脳・脊髄に常在するマクロファージであり、多くの長い突起を伸ばし周囲のニューロンに異常がないか常に監視しています。感染や傷害などの異常が起きると、ミクログリアは速やかにその場に移動し細胞の形態を変え、異物や死細胞を食べて取り除き、神経保護因子を放出して組織の修復を助けます。しかし、過剰に活性化されると炎症性・傷害性因子を大量に放出し、ニューロンを傷害します。また、発生時に不要なシナプスを貪食により刈込みニューロンネットワークを構築しますが、その一方で、制御の効かない過剰な貪食により生きたニューロンを殺してしまうことも知られています。アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、虚血などの脳血管障害に加え、統合失調症、自閉症、ダウン症などほとんどすべての神経疾患においてミクログリアの活性化の関与が明らかにされつつあります。ミクログリアがいかにして神経を保護するのか、また、どのようにして暴走し神経障害を引き起こすのか、「両刃の剣」としての振舞いに対する理解が深まれば、これらの神経疾患の新しい治療の開発につながると期待されます。
細菌の膜成分であるリポ多糖(LPS)はミクログリアのトル様受容体(TLR)4を活性化し炎症反応を引き起こします。当研究室では、初代ラット脳ミクログリアにはLPSに対する反応性の異なる集団が存在することを見出し、それらの細胞の長期にわたる生存維持、神経保護因子産生と神経保護作用、死細胞貪食のメカニズムに焦点を当てて研究を行っています。また、細胞のエネルギー源であるATPなどのヌクレオチドは、刺激や傷害により細胞外に放出され特異的受容体を介してミクログリアを活性化します。炎症時にはミクログリアのヌクレオチドに対する反応性は大きく変化し、ミクログリアは新たな機能を獲得していきます。私たちは、これがミクログリアの組織修復・神経保護作用の強化につながるのか、暴走へのスイッチとなるのかを明らかにすることにより、新しい治療標的を見出すことを目指しています。
ミクログリアは常に神経組織を監視し、死細胞などの不要物を除去し、異常があれば神経保護因子を産生しニューロンを保護します しかし、何らかの理由で暴走すると過剰な傷害性因子の産生や貪食により神経傷害に働きます これらの保護・暴走シフトのメカニズムについて解析を行っています |
ラット脳初代培養ミクログリアをLPSで刺激すると細胞死が誘導されます 死を免れたミクログリアは死細胞を活発に貪食し、長期に渡り生存し続けます これらの細胞の性質とその分子基盤について検討しています |
主な発表論文
1. Kamigaki, M., Hide, I., Yanase, Y., Shiraki, H., Harada, K., Tanaka, Y.,
Seki, T., Shirafuji, T., Tanaka, S,. Hide, M., Sakai, N., The Toll-like
receptor 4-activated neuroprotective microglia subpopulation survives via
granulocyte macrophage colony-stimulating factor and JAK2/STAT5 signaling.
Neurochem.
Int. 93:82-94 (2016) [PubMed]
2. Harada, K., Hide, I., Seki, T., Tanaka, S., Nakata, Y., Sakai, N., Extracellular
ATP differentially modulates Toll-like receptor 4-mediated cell survival
and death of microglia. J. Neurochem. 116:1138-1147 (2011) [PubMed]
3. Suzuki, S., Hide, I., Ido, K., Kohsaka, S., Inoue, K., Nakata, Y., Production
and release of neuroprotective tumor necrosis factor from P2X7 receptor-activated microglia. J. Neurosci. 24: 1-7 (2004)
4. Hide, I., Tanaka, M., Inoue, A., Nakajima, K., Kohsaka, S., Inoue, K.,
Nakata, Y., Extracellular ATP triggers tumor necrosis factor-alpha release
from rat microglia. J. Neurochem. 75: 965-972 (2000) [PubMed]
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